SNSでバズる政策・話題
2025年参院選では、X(旧Twitter)を中心に有権者の関心が可視化されています。共同通信の分析によれば、選挙関連投稿で最も多く言及された政策ワードは「減税」で、次いで「消費税」が上位に挙がりました。物価高に対する不安から、与党が打ち出す現金給付策や野党の消費税減税議論に注目が集まっていることが伺えます。また「給付金」やガソリン税の暫定税率廃止時期をめぐる「ガソリン」なども頻出しており、物価高対策全般がSNS上の重要テーマとなっています。
一方、今回の選挙戦では外国人との共生のあり方を争点に掲げる政党もあり、SNS上で関連ワードが拡散されています。税金議論に次いで「日本人」「外国人」といった言葉が浮上し、「外国人問題」や「帰化」といったフレーズが飛び交う日もあったと報じられました。特定の地域で外国人住民との摩擦を強調するような投稿が物議を醸し、このテーマがネット上の新たな関心事として急浮上した面もあります。
また、SNSそのものが選挙戦のトレンドです。多くの候補者や政党がXやInstagramで積極的に情報発信し、ハッシュタグ戦略も展開されています。「#参院選2025」「#選挙へ行こう」などのタグが飛び交い、支持を訴える投稿から投票を呼びかける市民の声まで幅広く拡散。特に若年層に人気のTikTokではショート動画によるPR合戦が繰り広げられています。自民党・日本維新の会・国民民主党など主要政党が次々と公式TikTokアカウントを開設し、バラエティに富む動画コンテンツで「バズり」を狙う選挙戦術に乗り出しました。これらの動きは「政治離れ」と言われた若者世代の目を政治に向けさせる試みとして注目されていますが、同時に中国系アプリ利用に対するデータ漏洩リスクへの懸念も一部で議論されています。
異例づくしの選挙戦術と現象
2025年参院選は従来にない様々な試みが見られます。特に若者の投票率向上を目指す取り組みが各地で話題です。新潟県柏崎市では大学生の投票率アップを狙い、「出張バス」で移動期日前投票所を大学キャンパスに設置するという全国でも異例の施策が行われました。同様に愛媛県でも松山大・愛媛大に期日前投票所を開設し、学生スタッフが投票参加を呼びかけるなど、自治体が工夫を凝らしています。期日前投票者数も過去最多ペースとの報道があり、若者を含め有権者の関心が高まっている兆しです。
ネット配信を活用した討論会も異彩を放っています。N高等学校(ネット高校)の政治部に所属する中高生たちがニコニコ生放送で公開討論番組を主催し、「ネットと政治」をテーマに各党の若手政治家と議論する試みが注目されました。被選挙権年齢の引き下げや各党の若者政策、SNSの功罪などについて10代が直接問いかける構図は、「政治離れ」と言われた若年層の積極的な関与としてSNS上でも賞賛の声が上がりました。生徒たちはファクトチェックや情報リテラシーの重要性にも言及し、政治家と対等に議論を交わした様子がリアルタイムで拡散されました。これはネット時代の新しい選挙文化ともいえ、政治参加の形が多様化している象徴的な出来事です。
政党側もイメージ戦略に工夫を凝らしています。例えば、与党・自民党は若者へのアピール強化のため公式TikTok開設に踏み切り、人気TikTokクリエイターを党本部に招いてPRイベントを行うなどデジタル面での刷新を図りました。一方で、この動きには「保守政党が中国系SNSを使うのはリスクでは?」との指摘もあり、国家安全保障上の懸念がネットで議論になる場面もありました。野党勢も負けじとショート動画で政策アピールを展開し、選挙期間中TikTok上で「バズった」動画の分析記事では「若者目線」「笑いの要素」「わかりやすさ」がバズる3要素と指摘されています。主要9党が公式アカウントで競うという構図は、日本の国政選挙で初のTikTok選挙戦とも言われ、メディアでも取り上げられました。
さらに「民主党」の略称問題も話題を呼んでいます。立憲民主党と国民民主党の両党が、今回も公職選挙法上の届け出略称として同じ「民主党」を使用したため、有権者の混乱や票の行方に注目が集まりました。2019年参院選以来の現象であり、「またか」と呆れる声や「略称を一本化すべき」との議論がSNSでも飛び交いました。こうした政党間の意外な綱引きも含め、従来の常識にとらわれない動きが次々と現れているのが2025年参院選の特徴です。
タレント候補と注目の新顔
毎回選挙の度に話題となるタレント候補者ですが、今回は特に異色の顔ぶれが注目されています。最大の驚きは、お笑いトリオ「コント赤信号」で知られるラサール石井さん(69)が社民党から比例代表で立候補したことです。社民党は国政政党要件維持のために比例代表で2%以上の得票が必要な「存亡を懸けた戦い」と位置付けており、知名度抜群のラサール氏を“切り札”として擁立しました。ラサール氏本人も会見で「福島みずほ党首の奮闘に魅力を感じ、一緒に戦いたいと思った。社民党が無くなれば国のタガが外れる」と熱弁し、政権批判の発信を続けてきた自身の信念を語っています。SNS上では「芸能人が政治を語るな」との批判も根強い一方、「有名人が小政党を救う構図が面白い」と話題になり、彼の街頭演説には報道陣も詰めかけ注目度の高さが窺えます。もっとも、報道によれば都内・亀有駅前で行った演説会の聴衆がわずか20人程度と伸び悩み、「知名度=集票力ではない」との指摘も。SNSでは「ラサール石井が政党要件喪失の危機を救えるか?」との記事が拡散され、賛否両論が巻き起こっています。
もう一人の大物芸能人が世良公則さん(69)です。1970年代に「ツイスト」のボーカルとしてヒット曲を連発し俳優としても活躍した世良氏は、無所属で大阪選挙区から出馬することを公示直前の7月1日に表明しました。これを受けNHKは、偶然にも世良氏が出演していた朝ドラ「チョッちゃん」のアンコール放送を急遽休止。「参院選をめぐる状況を踏まえ総合的判断」とのNHK発表に対し、「出演者の誰かが立候補するのでは?」と視聴者の間で推測が広がり、その翌日に世良氏の出馬が明らかになるという劇的展開でした。ネット上では「NHKがドラマを止めてまで配慮するとは前代未聞!」と驚きの声が上がり、同時に世良氏の政治的主張にも関心が集まっています。世良氏自身、以前から政府のコロナ政策を批判したり、自身のX投稿で政治的発言を繰り返すなど社会への問題意識を示してきただけに、「満を持しての出馬」と受け取られています。芸能界からの異色チャレンジャーとして世良氏の動向は終盤戦まで目が離せません。
さらにスポーツ界やネット界からも新顔が登場しています。元K-1世界王者の久保優太氏(36)は日本維新の会公認で比例区に名を連ね、格闘技ファンのみならず保守層からも注目されています。ネットでは久保氏が街頭で繰り広げた“外国人実態調査”動画が議論を呼びましたが、後述のようにその内容が物議を醸す事態ともなりました。また、NHK党(現・政治家女子48党から改称)のガーシー元議員は除名されましたが、後継としてタレントやYouTuber出身者が比例名簿に名を連ねており、「YouTuber議員再び?」とSNSで話題に。【※朝日比例候補一覧】一方、新興政党の参政党は有名政治家ではなく無名の新人候補を各地に擁立し、「ミステリアスな新人」の正体探しが一部ネットメディアで盛り上がりました。例えば東京選挙区の参政党候補「さや」氏は元航空自衛官の田母神俊雄氏を支援するグループ出身であることが報じられ、コアな層の注目を集めています。このように、多様なジャンルからの参入者が入り混じる選挙戦はエンタメ性も帯びており、「今回の参院選はまるでオールスター戦」との声も聞かれるほどです。
炎上・スキャンダル事件簿
選挙戦につきものなのがスキャンダルや候補者の失言ですが、2025年もSNS時代ならではの“炎上”が相次いでいます。まず国民民主党の比例候補だった佐々木喜一氏は、選挙中に自身のXで奇妙なスピリチュアル動画を投稿し物議を醸しました。AI生成と思われるその動画では「日本人の空気を読む力に世界が驚いている」などと日本人の“特殊能力”を称賛する内容が流れ、「まるで怪しいYouTube動画」と嘲笑の的に。じわじわ炎上した末に投稿は削除されましたが、「国民民主からこんなオカルト動画が出るとは…」といった困惑が広がり、スクリーンショットが出回る結果となりました。この一件で佐々木氏は事実上選挙戦から脱落し、党へのイメージ低下も避けられない状況です。
参政党の東京選挙区候補「さや」氏もSNS炎上の洗礼を浴びました。あるホストクラブ関係者のXアカウントが「投票済証明書が初回無料券に」という趣旨で、投票用紙に候補者名を書いたイラストと彼女の写真を投稿したところ、さや氏本人が「感謝でいっぱいです。皆の想いを無駄にしないよう頑張ります」と返信。しかし有権者への金品提供を禁じた公職選挙法に抵触する恐れが指摘され、大炎上に発展しました。「これは買収に当たるのでは?」との批判が殺到し、参政党は慌てて公式アカウントで「候補者の認識不足による不適切な返信だった」と謝罪声明を発表。さや氏自身もお詫び文を出しましたが、「謝って済む話ではない」「投稿削除しても証拠は拡散済み」と批判は収まらず、結局この投稿はネット上で消すと増える状態になってしまいました。新人ゆえの失態とはいえ、公選法遵守の重要性が改めて浮き彫りになった事件です。
日本維新の会から比例出馬した久保優太氏のケースも見逃せません。彼は前述の通りK-1で名を馳せた格闘家ですが、選挙戦では外国人問題に首を突っ込みました。埼玉県蕨市の繁華街で「外国人が日本語も話せないのにこんなに集まっているのはおかしい」といった趣旨の“現地調査”動画を公開し、「外国人だらけで治安が心配」「日本に来るなら日本語を話せ」といった差別的とも取れる発言を連発。投稿文にも「日本語すら喋れない取材拒否の外国人、こんなのはおかしい」と煽るような言葉が添えられました。この動画はSNSで瞬く間に拡散され、「露骨なヘイトではないか」と大炎上。のちに久保氏の事務所は動画削除のうえで「編集ミスで分断的な印象を与えてしまった。本来の意図とは異なる形になり反省している」と謝罪しました。しかし「ノーカット版を公開すべき」「謝って済む問題か?」との声が噴出し、対応がむしろ火に油を注ぐ結果に。「アポ無しでカメラ向けられたら嫌がるの当たり前」「差別意識が透けている」と批判が収まらず、維新内部でも対応に苦慮する騒ぎとなっています。
さらに、選挙終盤にはメディアとの摩擦も炎上を招きました。参政党がTBSの報道番組に対し「我が党への報道内容が著しく不公平だ」と抗議文を出し、それをSNS上で公表したのです。TBS側は番組内で取り上げた参政党の政策に関する指摘について「公平性を欠いたものではない」と回答しましたが、参政党支持者らは「既存メディアの偏向報道だ」と猛反発。ハッシュタグ「#報道特集デタラメ」が拡散される事態となりました(【※オリコンニュース 2025/7/13】)。一方で「メディア批判も結構だが陰謀論じみている」と冷ややかな意見もあり、参政党をめぐる評価の分断が浮き彫りになっています。
このようにSNS時代の選挙では、候補者自身の発信ミスや第三者の投稿へのリアクションひとつで瞬時に炎上が起こり得ます。各陣営ともSNS担当者を置きリスク管理に努めていますが、それでも「想定外の燃え広がり」が続発するのが現状です。J-CASTニュースは「今やSNSは選挙活動で大きな武器だが、使い方を間違えると諸刃の剣となってしまう」と警鐘を鳴らしています。投稿の削除で却って注目を浴びて拡散が続く「消すと増える」現象もネットでは知られており、候補者・政党にとってSNS対応は極めて神経を使う課題となっています。
有権者の声と世論の行方
リアルタイムで伝わるSNS上の反応は、有権者の本音や世論の変化を映す鏡でもあります。選挙戦中盤、各種世論調査では与党苦戦の情勢が伝えられました。朝日新聞の終盤情勢調査では、自民・公明の与党が改選前勢力と非改選議席を合わせても参院過半数(125議席)維持が困難との見方が出ています。自民党は比例代表でも支持を落とし、選挙区と合わせた獲得議席が30台半ばにとどまる可能性が高いとされました。逆に野党勢では国民民主党が前回以上の議席をうかがう伸長を示し、さらに参政党が勢いを増しています。実際、共同通信の世論調査でも参政党の比例投票先支持率が8.1%と、立憲民主党や国民民主党を凌ぎ野党第1党に匹敵する躍進を見せたとの分析もあります。朝日調査でも、内閣不支持層の受け皿として参政党が支持を急伸させ、終盤には不支持層の22%が参政党に投票意向を示し他野党を上回ったと報じられました。ネット上では「参政党が野党第一党になるかも?」といった書き込みも目立ち、既存政党への不満が新興勢力に流れている様子がうかがえます。
有権者の声としてSNSで散見されるのは、「今の政治に閉塞感を感じる」「与党も野党も期待外れなので新顔に託す」といった投稿です。特に若者層からは「自民一強にノーを」「古い体質の政党では変革は無理」との声が上がり、それが参政党や国民民主といった比較的新しい選択肢への支持につながっているようです。一方で、「極端な主張や陰謀論には与したくない」という冷静な意見もあり、ネット上の議論も二極化する傾向にあります。専門家は「SNS上の盛り上がりと実際の投票行動は必ずしも一致しない」と指摘しますが、SNSで勢いづいたムーブメントが投票日直前に伝統的支持層以外の浮動票を動かす可能性は否定できません。
さらに「#選挙へ行こう」「#投票しました」といったハッシュタグの広がりからは、市民による投票率向上への意識もうかがえます。Instagramでは有志がデザインした投票啓発ポスターをシェアする「投票ポスター2025」プロジェクトが展開され、若者を中心に共感を呼びました()。Twitter改めXでも投票日が近づくにつれ「皆で選挙に行ってこの国の未来を選ぼう」という呼びかけツイートが急増し、著名人やインフルエンサーも参加してムーブメント化しています。こうした有権者発の盛り上がりは投票率アップにつながる可能性があり、実際に期日前投票の段階で各地で前回選挙を上回る投票者数が報告されています。
最後に、SNSを通じた情報の受発信が選挙に与える影響力は年々増す一方で、デマ情報や誹謗中傷への注意喚起も重要になっています。誤った情報がバズってしまう危うさや、候補者への根拠なき中傷が飛び交うケースも後を絶ちません。ネット選挙解禁から約10年、この間にSNSは有権者の判断材料として欠かせない存在となりましたが、その光と影を見極める力が求められています。有権者一人ひとりが発信者にもなり得る時代、選挙はもはや政治家や政党だけのものではなく「参加型の祭典」へと変わりつつあります。
7月20日の投開票日に向け、SNS発の最新ニュースや話題は刻一刻と更新されています。リアルタイムの盛り上がりを追いつつも、最終的に鍵を握るのは言うまでもなく有権者の一票一票です。SNSで得た情報や盛り上がりを実際の投票行動につなげられるか――それこそが2025年参院選の行方を左右する最大のポイントと言えるでしょう。各種トレンドに惑わされず、しかし時代の空気を映すSNSの声にも耳を傾けながら、日本中がこの選挙の行方を見守っています。